外資系企業と、大使館を始め外国政府機関が集中している東京では、他都市に比べて外国人居住者が圧倒的に多く、その家族の教育ニーズに応えるインターナショナル・スクールが数多くあります。幼稚園(キンダーガーテン)から高校12年生までの英語による一貫教育を行う大きな学校、アメリカン・インターナショナル・イン・ジャパン(ASIJ)、ブリティッシュ・スクール、セント・メリーズ・インターナショナル・スクール、聖心インターナショナル・スクール、清泉インターナショナル・スクールなどは、主に外国人家族を対象としており、日本人の子どもの入学は難度が高いとされています。また、高校を持たない西町インターナショナル・スクールや東京インターナショナル・スクールも、日本人にとっては狭き門となっています。
しかし、ビジネスのグローバル化と社会の多様化を背景に、インターナショナル・スクールで国際教育を受けさせたいと希望する日本人は増え続けています。そこで、日本人が比較的入りやすいインターナショナル・スクールや、日本の学校としての要件を満たした上で、英語のイマージョン教育を行う私立校の設立が増えました。こうしたスクールは、前述の大きなインターナショナル・スクールに比べて授業料が低く、特に新設校については、生徒獲得のために入学資格要件を低くしているため、かなり入りやすくなっているようです。しかし、いずれのスクールも、入学するためには一定の英語力が要求されますので、帰国子女でない場合は、インターナショナル・プリスクールまたは英語幼稚園などで英語力をつけた後に受験するのが一般的です。
インターナショナル・スクールの入学試験は、毎年1月から2月後半の時期に行われますが、その前の秋に、志望校のスクール・ツアーと説明会に参加して、願書を貰い、10月-11月に書類を提出します。親が記入する願書(アプリケーション・フォーム)に加えて、子どもの学力、性格、社会性などについて、在籍するプリスクールの担任教師が記入する書類(アセスメント・フォーム)の提出を義務付けているスクールが多いので、入学願い(アドミッション)の準備には十分な時間が必要です。テストとインタービューの入学試験後、合否結果は3月頃に届きます。
日本の義務教育を捨てて、インターナショナル・スクール一貫校に通わせる最大のデメリットは、まともな日本語教育が受けられないことです。インターナショナル・スクールの卒業生は、英語は見事ですが、きちんとしたきれいな日本語を話せる人は少なく、漢字の読み書きに至っては、ほとんどが苦手だとしています。
また、インターナショナル・スクールでは、小学校高学年以上になると、学習内容が急に難しくなるため、毎日の宿題やテストに苦戦する子どもが増えてきます。親も、難しい内容の宿題を手助けできないですし、一般的な補習塾は日本の義務教育に沿った内容なので、塾も講師も助けにはなりません。こうしたことから、子どもに家庭教師をつけている家庭も少なくありません。
また、学習内容の他に、子ども自身の英語力にも問題が出てきます。言語能力は、学校での学習たけでなく、家庭や社会から得る情報、知識、経験を積み重ねていくなかで強く育っていきます。家庭でのコミュニケーションが日本語だけの子どもの場合、英語がネイティブの両親に育てられている子どもより、英語力が弱いのは当然のことです。
インターナショナル・スクールのブームが、こうした日本語も英語も弱い、「ダブル・リミテッド」の子どもの数を増やしているのも、また事実です。しかし、インターナショナル・スクールでうまく行かないと言って、途中で日本の義務教育に戻すのは、子どもの学習面においても、社会性の発達においても、大変な困難とリスクを伴います。現在、様々な教育の選択肢がある中で、インターナショナル・スクールでの教育に子どもの将来を託す親の多くが、自分たちの体験とは異なる環境と可能性を子どもに与えてやりたい、また、自分が苦労したから、子どもには早くから英語力を身につけさせてやりたいとおっしゃいます。しかし、実際の子育てと教育の道は、たいへん長く、決して平坦なものではありません。一旦教育に費やした時間とお金は、後で取り戻せません。
中国、インド、韓国などから、毎年、多くの学生が、欧米の名門大学を目指して留学しています。以前は、日本のインターナショナル・スクールから、毎年何人もの生徒が、アメリカのアイビーリーク校を始め、トップ校に進学しました。しかし、最近は、アジア系やインドのやる気に満ちた秀才たちとの競争に負けて、進路結果は以前ほどではないようです。この傾向は、そのまま、将来のグローバルな雇用市場やビジネスの世界に影響していくと懸念されます。これからの日本人は、将来の長きにわたって、こうした海外の優秀な人材との競争に晒されていくことでしょう。
インターナショナル・スクールへの進路の選択をする前に、まず、現実的な予算と方向性を決めて、夫婦で中・長期的な教育プランを立てることをお勧めします。また、学校の勉強だけでなく、スポーツや芸術に秀でていることも、人間としてとても素敵なことです。日本の教育、国際教育、いずれを選ぶにしても、まず子どもの個性や優れているところを見つけて、それを褒めて励ましながら、時間を掛けて自信とやる気のある子に育てていくことがとても大切です。
ズー・フォニックス・アカデミー
インターナショナル・プリスクールプログラム