コラム
Column

子供英語・英会話専門校ズー・フォニックス・アカデミーの【コラム】のページです。幼児期からの早期英語教育から英検検定テストの受験まで、子ども英語教育に関する様々なトピックスを、コラムでお伝えします。

コラム一覧

2022.03.28
日本人の子どものバイリンガル教育について

言語習得の難易度

母語以外の言語の習得には、長い時間がかかります。海外に暮らして、現地の言語を直接学ぶ機会があれば別ですが、実生活で使う必要のない言語を習得するには、目標をもった継続学習と弛まぬ努力が必要です。日本語を母語とする私たち日本人は、一般的に、中学、高校、大学までの教育で、約1000時間英語を学習するそうです。しかし、実際、自分は英語が苦手だと考える日本人が大変多いのは何故でしょうか。

1973年にアメリカ国務省の外交官養成機関が、実際の学習者(いずれも高学歴の外交官候補)への観察に基づいて研究し、発表した資料があります。この研究では、世界の諸言語を、英語を母語とする学習者が日常生活に困らないレベルに到達するために費やす学習時間と難易度で、4グループに分類しています。以下は、それぞれのグループの代表的な言語と、習得に必要な学習時間です。

● 難易度1:オランダ語、フランス語、スペイン語、ドイツ語など   …  約600時間
● 難易度2:ギリシャ語、ヒンズー語、ファシ語、インドネシア語など …  約900時間
● 難易度3:ロシア語、トルコ語、タイ語、ハンガリー語など   …  約1100時間
● 難易度4:日本語、中国語、韓国語、アラビア語    … 2400〜2760時間

このデータによれば、「グループ1」のオランダ語なら、平均的な言語適性を持つアメリカ人が「言語能力ゼロ」の状態から、ほぼ600時間の学習で「一般的な言語学習の完成レベル」に到達できますが、日本語や韓国語の場合、完成レベルに達するには2400時間以上もかかります。逆を考えれば、オランダ人が英語を習得するのは簡単だということです。事実、オランダ人のTOEFL (Test of English as a Foreign Language)の成績が飛びぬけてよいことがそれを裏付けています。また、日本人がなぜ英語が下手な国民なのかも説明できます。

私たち日本人が英語をマスターするために、2400時間以上の学習時間が必要だとすると、中学校から大学卒業までの1000時間では到底間に合わず、半分にも足りません。ようやく2021年度新学習指導要領により、小学校高学年から英語が教科となり、中学校での英語教育が刷新されましたが、アジアの他の国々と比較しても、日本はまだ遅れており、学習量も足りません。やはり、英語学習はもっと早くから始めるべきではないかと考えます。

20年以上、Zoo-phonics Academyでたくさんの子どもたちに英語を教えてきました。そして、多くの成功例を見てきました。耳がよく、吸収が早い幼児期から英語学習を始めた子どもたちは、中学、高校で英語に苦労することがないばかりか、その優れた英語力を活かして、私立難関校に進学、あるいは海外の高校、大学への留学を果たしました。

幼児・児童の英語教育においては、年齢と発達にあった楽しい環境と学習プログラムを適時に与えて、子どもたちの「英語が好き」、「英語が得意」というやる気と自信を育てていくことが大切だと考えます。しかし、ただ英語環境に長時間置くだけで、子どもは自然に英語をマスターしてバイリンガルに育っていくものではありません。実際、何の言語であれ、幼児・児童の言語習得には、大切な要点がいくつかあります。それは、言語には、生活言語能力と学習言語能力という異なった側面の言語能力があるためです。

BICS(生活言語力)とCALP(学習言語力)について

BICSとCALPは、1つの国に英語圏とフランス語圏を持ち、様々な国からの移民を受け入れている多言語国家のカナダで、第二言語としての英語教育を長年研究してきたトロント大学のカミンズ教授がBICSとCALPとして唱えて一般的に広まりました。

▶BICS (Basic Interpersonal Communicative Skills) - 『日常会話など比較的具体的で、また伝達される内容を理解するのに場面や文脈から多くの手がかりが得られるような言語活動において、必要とされる言語能力の一側面』 - 生活言語能力 – 日常生活の中で獲得していく言語能力で、具体的なことを表す言語能力。

▶CALP (Cognitive Academic Language Proficiency)は、『抽象的な思考が要求される認知行動と深く関連し、認識力や類推力を伸ばすために必要とされる言語能力の一側面』 - 学習言語能力 -学習活動や授業などにより獲得される言語能力で抽象的、概念的なことを表し、高度に認知を発達させる上で必要な言語能力。

2つの能力は概念としては異なりますが、BICS(生活言語能力)は会話のみ、CALP(学習言語能力)は読み書きというわけではありません。生活言語能力をまず習得したのちに、学習言語能力へ到達していくものです。BICS(生活言語能力)は、その言語環境にいれば必要に応じて自然と習得して行きますが、CALP(学習言語能力)の獲得には、一定時間以上の教科学習の積み重ねが必要です。

英語圏におけるBICS(生活言語能力)とは、日常生活をする上で必要な英語力のことです。例えば、友だちと遊ぶ、人のものを尋ねる、買い物をするなどです。2-3年(時間と個人差はあります)で形成されると言われています。一方、CALP(学習言語能力)は、認知的、学術的活動を行う際に必要な能力、学業で成功するために必要な言語能力です。例えば、読書、討論、スピーチをする能力です。私たちは、本を読んだり、考えたり、ある事物を抽象化したりするとき、「言葉」を使います。児童は、教科を学びながら言葉の概念を知り、より豊かな世界を築くための言葉を日々獲得していきます。この学習言語能力の育成には、5年以上の教科学習が必要といわれています。より最近のThomas & Collierの研究では、家庭での言語習得のサポートやスクールでの学習経験がない子どもの場合は、同じ年頃の子どもの能力のレベルに到達するのに、7-10 年掛かると報告しています。

BICSとCALPの難しさの例として、海外からの帰国子女または海外へ移住する家族のケースが挙げられます。帰国子女の場合、教育を受けるのは日本語ですが、海外に移住する場合は、現地の言語、例えば英語、フランス語、中国語となります。児童が学校に通い始めると間もなく、教師や同級生との日常会話には困らなくなります。子どもは覚えるのが早いので、親も安心するかもしれません。しかし、会話が流暢になっても、実は教科学習の内容があまり理解できておらず、学校の宿題やテストに苦労して、成績も思うように上がりません。このように、言語能力の問題により、子どもの学力に悩みを持つ家族は少なくありません。

第二言語習得における母語の重要性

今の日本の教育現場でも、「日本語の指導を必要とする外国人児童生徒」の増加で、日常生活の日本語には困らないものの、学校での学習の日本語について行けない児童生徒が多く、問題になっています。先ほども述べたように、言語には、BICS(生活言語能力)とCALP(学習言語能力)という異なった側面があります。更に、第二言語の学習言語能力を伸ばすためには、元となる第一言語(多くの場合は「母語」)での認知発達が大きく関係します。自らの言葉である「母語」(もしくは母語になるべき言葉)は、自らの思考・認知のための“拠り所”となります。母語は、その上に重ねる第二言語の教科学習には欠かせないものです。強い母語であれば、第二言語もより伸びます。

さらにカミンズ教授は、第一言語(母語)と第二言語の関係について、子どもの母語やそれに伴う認知力が発達しているほど第二言語も発達しやすく、母語が低い発達段階であると、第二言語や認知力の発達も難しくなると説く「発達相互依存仮説」を唱えました。つまり、どちらかの言語で認知力を発達させられれば、その能力は他方の言語にも移転するという仮説です。つまり、多言語環境にある子ども達には、学習言語能力の獲得が重要であり、そのためには母語と第二言語(今回の場合は、英語と日本語)の相互の発達が必要ということになります。

Zoo-phonics Academyインターナショナル・スクールでは、こうした言語教育上の理論を取り入れています。2歳からの4年間の完全英語環境で、お子さまの生活言語能力(BICS)を育成しながら、フォニックス教授法による段階的な読み書きの学習とアカデミックなカリキュラムで学習言語能力(CALP)を伸ばします。就学までに、本を読む、考える、話し合う、感想を書くなど、米国小学校1年生レベルの学習言語能力の獲得を目標としています。4年間の学習で身につけた能力は、卒園後は、小学生アドバンス・クラスで学習を継続することで、更に伸ばしていきます。

また、「母語」の大切さから、当校の生徒の保護者には、家庭での日本語力の強化を特にお願いしています。正しい日本語の話しかけとしつけによる会話力と、本の読み聞かせによる語彙力、表現力、思考性、推察力などの育成です。家庭での日本語発達強化と並行して、スクールでの学習を通して英語4技能を早期に開発していくことが、二言語に長けたバイリンガルへの近道です。このようにして身につけた能力は、大学教育までの長い道のりの要所要所で役立つだけでなく、子どもたちの将来の可能性を大きく広げます。

ズー・フォニックス・アカデミー
インターナショナル・スクール プログラム

コラムトップに戻る

資料請求

無料体験レッスン

トップへ戻る